大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和24年(新を)1063号 判決 1950年6月14日

被告人

大滝良男

主文

原判決を破棄する。

本件を千葉簡易裁判所に移送する。

理由

職権によつて調査するに、原審公判調書の記載によると、原判示過失致死行為の証拠として挙示せられた、司法警察職員の作成に係る実況見分書は原審公廷において検事によつて朗読せられておるにすぎない。しかるに右実況見分書中には現場の見取図、写眞等が綴られており、それ等には符号其の他によつて特定の地点が指示せられておりこれ等見取図、写眞と実況見分書の本文とを対照しなければ現場並車輪の状況等を知ることができない而して右符号の地点は本件の過失致死事案の現場の地点に該当するものであるから、右の見取図、写眞等は結局感覚的実驗によつて証拠とされる物理的存在に帰することとなる。従つて右実況見分書添付の見取図、写眞等は証拠物たる性質をも有するから、右図面写眞等を含む実況見分書を証拠として取調べるに当つては其の書面の内容を朗読すると共に右の見取図並びに写眞等が被告人に示されなければならない。然るに右見取図等が被告人に示されたことは原審公判調書の記載によつてこれを認め得ない。即ち原判決は適法に証拠調の手続の行われなかつた証拠によつて事実を認定したものであり、右の法令違反が判決に影響を及ぼすことは明白である。されば原判決は此の点においても亦破棄を免れない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例